図書館フリーク

 

 

大学の図書館、この存在の大きさと好きな気持ちが湧き上がった。

この湧き上がりによる熱量は高く、すぐに萎んでしまいそうな勢いを含んでいるため、取り急ぎこちらに記しておこうと思う。

 

 

通っている大学の図書館は、威厳のある雰囲気は無く、かなり軽い。

大学の図書館はきっとハリーポッターに出てくるような重厚感のある空間だろうと想像していた入学当初はその軽さにがっかりしたものだ。

 

ゲートから中に入ると、明るい蛍光灯に照らされ、パステルの優しい色合いのインテリアや木目が顔を覗かせる。その子供のような色合いから、小学校の英語室を思い出し匂いを嗅いでみると、無臭である。小学校の英語室は独特な匂いがしたことを懐かしく感じながら、余計な匂いに邪魔されることのない清潔な空間を進んでいく。ロの字型の空間が2段。初めは迷い、何もない図書館だ。と落ち込んだ記憶があるが、今はこのコンパクトな作りが気に入っている。

 

奥まで進むとビデオ視聴コーナーがある。横切る時に鑑賞している人の画面が少し見えるが、通るたびに誰かしらが『ティファニーで朝食を』を観ている。名作だからか、オードリーが美しいからか、単にビデオの品揃えが悪いから仕方なくなのか、真相は謎であるが、とにかく大人気である。

これほど大人気であるならば、棚の半分くらい『ティファニーで朝食を』を置くべきである。

皆んなに朝食が行き渡り、全てのテレビ画面がティファニー前で止まる画を想像するだけで清々しい気持ちになる。いつか実現してほしい

 

 

このように、図書館で思いがけない朝食を頂くことも中々に楽しいが、図書館の好きな所は他にもある。その一つが図書館内のお手洗いだ。

中に入るとデパートのように清潔で美しい空間が広がり、パウダールームの大きな鏡が1人の私を映し出す。非現実的な空間である。

その鏡に全てを映し出されているような感覚に陥り、不思議な気持ちで後を出ると、なんとも言えない勝ち誇った気持ちになる。何故だかは分からないが、あの場所一帯には魔力があるのだと思う。凄いパワースポットなので、意味もなく行くことが多い。

ちなみにここには、貴重品は持ち歩いてくださいという張り紙が貼ってある。

この張り紙を見ると無性に心配になる。

財布を持っていても不安になる。

この不安も魔力のせいである。私の不用心な行動のせいではない。

 

図書館にはもう一つ、私を引きつける場所がある。そこはソファに座って本が読めるスペースだ。これがただのソファではない、1人がけで後ろから見るとそこに人が座っているのか、空席なのか全くわからない程すっぽりと全身を包み込んでくれる椅子である。

飲食店の個室や、ホーンテッドマンションのドゥームバギー、ベビーカーを屋根まですっぽり閉めて座っている子供に強い憧れを抱く、狭い空間が大好きな私にとって、この椅子は最高の癒し、究極の巣穴である。

包まれる感覚に浸りながら、目の前の小さなテーブルに本や課題を起き、テーブルの脚にあるケーブルで携帯を充電すれば最高の時間を過ごすことができる。左右に誰が座っているのかもわからない。1人だけの空間では、飲み物を飲むのも、小さな飴を舐めるのも許されている。

あまりにも最高の空間であるため、すぐに満席となる。満席が分かると露骨に落ち込んだ顔で足早にその場を後にし、空を見つめてため息をついてしまう。

できることならずっとここに座って授業を受けていたいと思う程の魅力で詰まっている。

もはや本を読みたいという気持ちよりもここに座りたいという気持ちから図書館に足を運んでいるのかもしれない。

卒業までに必ずこの椅子のブランドを調べ、将来的には傍に置いておく。。。そんな夢も一時は抱いたが、この椅子は図書館にあるからこそ魅力的なのだ。ものにはそれぞれ適材適所の配置があり、私がこの椅子の魅力を引き出すには通う他無いのである。

 

 

…ここまで図書館の魅力を熱く語ってきたが、全てを見ると肝心の本に対して何も触れていない事に気がついた。

自分の読書習慣のなさにドン引きである。が、

図書館という空間の中で、核である本を完全に無視して魅力を見つけ出す自分の行動にもはや才能を見出している。後は本を楽しみながら読めば、図書館通としてドヤ顔でゲートを通れるはずなので、もう少し頑張ってみようと思う。